Nikita

ブログ名は適当です。単なる日記なのでニキータと呼ぶことにします。

戦略的グズ克服術

 やらなくちゃいけないのに、なかなか手を付けられない。仕事だけじゃなくて、私生活でも、わかっちゃいるけどグズグズしてしまうことは多い。

 今回紹介する本は、『戦略的グズ克服術-ネイル・A・フィオーレ著』。初版本は、米国で30年前(1989年)に出版されている本で、本書の裏書には、「大切な自分の時間を守るための、グズの悪循環におちいらないための、戦略的時間管理術」とあり、冒頭の献辞には、「(前略)本書は、失った自尊心を取り戻したいと切望している人(中略)のために書かれたものでる。」とある。

  あれをやらないと、これをやろう、と決めたにもかかわらず、手を付けられずに、自尊心や自己肯定感が貶められることって多い。自己肯定感が低いというのは、自己に批判的で幸せを感じにくかったり他者との関係の構築がうまくいかなかったりいろいろと弊害がある。

 

グズを克服することで自尊心を取り戻せるのなら、と思って2008年に買ってはみたものの5年ほど本棚に眠っていた。このあたりが自分ってグズだなぁと思いつつ読み進めたけど、保有している自己啓発(?)関係の本の中でも内容的にはとても良かったので、今でも時々読み返す。古い本なのに、最近日本でもよく聞く『生産性』という言葉が出てくるなど、古くても内容は新しく感じる(むしろ色褪せないといったほうが適切かな)。

 本書の構成は大雑把に言って、Ⅰ.どうしてグズグズするのか、Ⅱ.グズの戦略的克服法、Ⅲ.応用編(グズの人との付き合い方など)といったところなので、この記事では、ⅠとⅡについて以下ざっくりまとめた。

 

Ⅰ.どうしてグズグズするのか

 本書の中で「グズ」とは、仕事を始めるときや仕上げるときに感じる不安に対処するための心のメカニズムであると定義され、グズの警告サインとして、

  • 人生を果たすことのできない義務の連続のように感じる(さばききれないほどのTo doリストを常に持っていたり、休みなのに思いっきり羽をのばすことができなかったり)
  • 時間間隔が希薄(遅刻したり、自分が過ごした時間を覚えてなかったり)
  • いつも欲求不満で落ち込んでいる(達成したことがないあるいは試みたことさえない人生の目標がある、楽しみを奪われているような気がする、いつも働いているか働いていないことに後ろめたさを感じている)

などが挙げられている。

 一方でグズの人が社会で失敗ばかりしているかというとそうでもないようで、頑張って仕事の納期を守り、ペナルティを回避するよう努力しているようだ。しかし、強いプレッシャーを感じながらの仕事となるため、結果に満足することはほとんどない。ここにグズの真の苦しみがあり、仕事が遅れることを絶えず不安に思い、仕上げた仕事が完ぺきではないことに対して罪悪感を覚えてしまうとのこと。この部分、すごく共感できる。これがグズのエッセンスだろうと思う。もっと遊びのように仕事を肯定的にとらえて処理できていれば楽しいだろうし満足感も得られるだろうし、さらには家に帰ってまで仕事のことを考えずにすむと思う。あぁ、自分手ダメ人間だな。。。と感じてしまうけど、著者は、怠惰やだらしなさ、その他の性格的欠点をグズの原因としないと明言しており救われる思いがした。それでは、何がグズの原因なのか。本書では大きく次の2点があげられている。1点目は、自己に対する批評、2点目はグズでいることで受け取れる報酬のため。1点目の自己に対する批評とは、幼少期から我々は大人から褒められるよりも否定的フィードバックを受けることが多く、「休んでいる暇はない、常に挑戦し続ける必要がある、人生も仕事も厳しい」というメッセージを受け取っており、この体験が、自分に怠け者の一面があることを認識させ、難しい物事を成し遂げるには自分を厳しくしつけ、プレッシャーや脅しをかける必要があること学ぶ(学んでしまう)。自分が怠け者であること、不完全であることを受け入れることを恐れている一方、幼少期の体験を通して、自分で自分に対する批評をしてしまい、自分には価値がないと考えてしまいがち(つまり恐れているのに、自己批判によって自分で自分を傷つけてしまうということ)。他人に対しては、どんな人でも価値があると考えることはできても(そもそも人間は生きているだけで価値があるのに)自分に対しては自己批判をしてしまうため価値を認められないというよくわからない状況に陥る。このように自分の価値や独立心が脅かされそうになることで恐れを感じ、その状態を和らげるために優柔不断にふるまってしまうとのこと。2点目のグズでいることの報酬とは、先延ばしにすることで得られる可能性のこと(実際にはそれが生じる蓋然性は低いのだが)で、例えば先延ばしにすることでだれか代わりの人がやってくれるとか、困難な決定を先延ばしにすることで、さらなる情報がもたらされたり、状況が変わりひとりでに解決の道が開けたりするということ。2点とも自分の経験に照らし合わせてとても共感できる。1点目については、自己肯定感がそもそも低くて、いつも仕事や宿題ややるべきこと(これをやらなきゃ成長できないと勝手に自分を追い込んでいただけ)を抱えて、しっかり休むことや遊ぶことを蔑ろにしていた。例えば、長期の休みを取って実家に帰っても、抱えきれないほどの大量の本や資料を持ち帰って、結局何も開かず、休んでるのにその持ってきた課題からの無言のプレッシャーを受け、かつ何もできなかったことに対して自己否定をするという、全然精神的に休めない状況に自ら追い込んでしまっていた。2点目については、仕事では困ったそぶりをすれば大体誰かが助けてくれるし、締め切りが明確な仕事も手をできるだけつけなければ、時間切れでやらなくていい可能性があることはある程度明確に知っていた。この手の対応って信頼とかやらない間の自分への大きなストレスなどかなり大きな代償を払ってるから、これが本当にグズに対する報酬になっているのかどうかは怪しいけれど。

グズの悪循環は、完璧主義的な要求→失敗への恐れ→グズ→自己批判→不安と憂鬱→自身の喪失→より大きな失敗への恐れ→より強いグズへの欲求。人はただ単に仕事をやることと、自分の価値を試すことを混同してしまうため、ちょっとした失敗でこの世の終わりのように感じる。小さな頃の体験で、自分の価値が自分のやることで決定される(本当はそんなことはなくて、前述のとおり生きているだけで価値があるはずなのに)と信じ込ませられていると、ただ仕事をすることではなく、失敗の恐れから心理的に自分を守ることに汲々とするようになるとのこと。

Ⅱ.グズの戦略的克服法

前述のような原因に基づいてグズは形成される。そこでグズの戦略的克服法としてはまず、小さい頃のしつけや文化的な条件付けに起因する自己疎外(自分自身を責めること)を癒す必要性を強調している。これには、内面での自分への語りかけ方を変える必要がある。例えば、グズの状態で仕事に直面したときには、自分の内面で「…ねばならない」とか「…するべきだ」という言葉が発せられるだろう。しかしこのような言葉は、「やりたくないけど、誰かのために無理してでもやらなければならない」といったメッセージを内包し、自分自身の自由意思に基づく選択ではないことをほのめかすことで、仕事への反発心を生み出す。そのような内面での葛藤を避けるためには、自らが選んでその仕事に関わっているということを自分に認識させることが必要となる。被害者意識のもとで仕事をさせられるよりも、仕事を自分の意志で支配しているという感覚を持つということだろう。グズ人間と生産的な人間の自分への語りかけの違いは以下のとおり。

グズ「…しなければならない」 生産的「…することを選ぶ」

       「仕上げなければならない」        「いつはじめられるか?」

       「これは大事業だ」                      「小さな一歩を踏み出すことはできる」

       「完璧でなければならない」        「人間的でもいいのだ」

       「遊ぶ時間がない」                 「遊ぶ時間を作ろう」

 失敗や他人からの評価が低くなることを恐れて仕事を延期するよりも、何度も失敗を繰り返しながらブラッシュアップしていく方が経験値もたまるし、長い目で見て成長すると思う。これは自分の体験から得ている教訓だけど、小さな失敗(挑戦的失敗、ケアレスミスではなく)を繰り返してると、失敗で他人からの評価が落ちたりすることはあまりなくて、仕事が遅いということの方が評価を落としやすいということにも気がつくと思う。

 また、この章では「心おきなく遊ぶこと」の重要性も説かれている。最も心に刺さったのが、グズ人間は「自分の人生を「保留状態」だと考え、いつの日か、成功して人生を楽しめるようになるだろうというかすかな希望にしがみついている」という言葉だった。我々はともすれば未来に生きて、将来のために現在を犠牲にしがちだ。でも生きるべきは今日だったりこの瞬間であって、不確定な未来じゃない。今を積み重ねて未来があるということを忘れては何のために生きていたのかわからなくなる。好きな映画のひとつフォレスト・ガンプ/一期一会の中で、「carpe diem 1日の花を摘め=この瞬間を楽しめ」という言葉ある。本書の中では、休日や休息や運動をけちると、気力やモチベーションが下がり、人生が色あせて見えるようになると書かれている。やはりこの瞬間をもっとも楽しむという態度を思い出すあるいは学ぶとよいだろう。

 同じ能力で同じ仕事をする中(本書の中では論文を書くという仕事が例示されていた)でも、短期間で成果を出すグループと長期間かけて成果を出すグループがいる。前者は余暇の時間を心行くまで楽しみ健康的な生活を送りつつ高いモチベーションと集中力を保っていた一方、後者は前者に比べ数倍もの時間をかけていたにもかかわらず、いつも忙しくしており自分の人生を「保留状態」と考え、仕事のためにプライベートの予定も空けていた。遊ぶことに対して後ろめたさを感じ、仕事は楽しみを奪い犠牲を強いるもので何かを代償にしなければならないと考えていた。大人はふつう遊びと仕事を切り話して考えるが、例えば好きな遊びは忍耐力や集中力を養う機会にもなるように、遊びを通して学んだり習得することも多々ある。また人間は、孤立や不安ではなく快感や成功が期待できるときの方が、活動的になりやすいとのこと。つまりは、仕事をコントロールするためには、仕事をする時間をできるだけ短くし(=苦痛を少なくする)、より頻繁に直接的な報酬を自分に与え(=もっと楽しく)、短い仕事時間と休憩や報酬を織り交ぜる必要がある。たしかに、経験上も職場にいる優秀とされている人たちは長期の休暇もとるし残業もそこそこに早く帰る人が多い。彼らは、やらないといけないこと、やらなくてもいいことをはっきり分けて、自分の仕事と認定したものに対しては十分にコミットし、自分の仕事ではないところには口を出さないし雑用に手を出さない。自分は、自分のしないといけない仕事を延期する理由が欲しくてこまごました雑用を大量にこなしていた時期もあったけど、そういう態度は上司にはばれてるんだよな。自分も同僚がそういう行動をとっているときには、はっきりわかる。この行動の背景も、前述したとおり、自分がやらないといけない仕事に対して、失敗したくないとか評価を下げれたくないという恐れから、やらなくていいもしくは出来ない理由を探していたんだろうと思う。話を元に戻すと、罪悪感のない遊びは質の高い仕事とお互い影響しあい、肯定的なサイクルを形成する。ではどうやって、罪悪感のない遊びを実現するのか?それが「すきま時間予定表」の活用である。

「すきま時間予定表」について

  • まず一週間の予定を1時間ごとに区切ったスケジュール帳(紙)を用意する。
  • 最初に書くのは、食事、睡眠、会合(仕事は除く)など前もって決められた時間、自由時間、読書、レクリエーション、付き合い、運動の時間、通勤時間や通院など日常の決まり事。まずは、仕事以外の活動の予定を書き込むというのが基本。ここで仕事の予定を書かないのは、この予定表が罪悪感のない遊びと私的な時間を確保することの正当性を保証するものだということをまず何よりも覚えてもらいたいから。この最初のステップで過剰な期待や無理な仕事のプランによって自分を苦しめることを防ぐ歯止めとして働く。また楽しい予定を先に入れておくことで、仕事時間は意外と限られており、集中してこなす必要性を感じることができる。
  • 次に、実際に働いた時間を毎日書き込む。書き込むのには一つ条件があって、30分以上集中して仕事をした場合のみ、仕事をしたとみなしてスケジュールを埋める。それ以外の細切れの仕事はカウントしないこととする。集中して取り組んだ仕事は30分であっても充実感を感じられ、それによって感じられる達成感は、プライドや自信を持つ助けになる。30分以上仕事を続けることができたら、休憩をとるかもっと楽しい仕事をするかして、自分にご褒美を与える。そうすることで、頻繁に自分に報酬を与えると、集中して仕事に取り組むことに対する肯定的なイメージが形成される。この30分以上仕事ができた時間を毎日集計しておくと、調子の指標になる。
  • 予定表を立てる上では一週間に少なくとも一日は、レクリエーションの時間を入れる。まったく休日がないと、燃え尽き症候群になったり、仕事を負担に思ったりするようになってしまう。リフレッシュするため、また創造性ややる気を維持するために必要。

 細かいやり方は本書に譲るとして、楽しい予定をまず入れる、仕事は細切れにして記録するというのがすきま時間予定表のポイント。自分がこの予定表を初めて作ったときは、昔からの癖で、余暇の時間はほとんどなく、きつきつの予定表が出来上がってしまった。でも結局そんな予定なんてこなせるはずもなく、立てた計画が遂行できずに自己嫌悪に陥るといういつものパターンだった。余暇と睡眠食事の時間をまずしっかり押さえるのが一番のポイントで、仕事の時間はあまりないというのを意識できたことで日中の集中力は少しは上がったかもしれない。あと、立てた予定がうまくいくと、とても気分がいいし、なにより遊びだけの計画を立てているときはとても楽しいし、会いたい人に会って、いきたいところに行って、食べたいものを食べて、と生きるってこういうことか、と思うことができる。

 本に書いてあったことで一番響いたのは、自分には価値があるということを認識することが最も重要という文脈で書かれていた次の文書。「興味深いことに、成功した人間は何度となく破滅や破産で苦しんでいる場合が多い。成功者とは、何度失敗しても立ち直れる人間を指すのだ。ところが、失敗者は一度失敗しただけで、自分に価値がないと判断し、失敗者の烙印を押す。」。幼少期の体験を通した自己批判や完璧主義とそこからの乖離に基づく自分の価値の否定からグズになる。だからまずは自分の価値を再認識し、心おきなく遊んで、隙間時間予定表などのツールを使いつつ、グズを克服する。本を読んだらもっと素晴らしいと思うけど、この本、実はもう新品では売ってない。でも図書館とかには結構あるようだし、古本でも買えるので是非一度手に取って読んでみると、もっと楽に物事を考えれるようになるきっかけになりそう。なんだかとりとめもない記事になってしまった。

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戦略的グズ克服術―ナウ・ハビット-ネイル A.フィオーレ

https://www.amazon.co.jp/戦略的グズ克服術―ナウ・ハビット-ネイル-フィオーレ/dp/4309244351

 

おしまい。